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噂をはっきりさせようと立ち上がった仲間うちの別の女子が


数人の男子を仲間に引き入れて、本人に直接確かめようという流れになった。


「謠子も本当のこと知りたいよね?」


彼女は「これが正義」という風な面持ちで使命感の塊みたいになり


こうなるともう誰も止めるものは居なくなって、真相を知ることにみんなが躍起になった。




第二章14-②誰かを好きになること~謠子16歳-小説【かくれんぼ】_d0140750_10340953.jpg



斯くして噂の森田君は呼び出され、仲間たちに囲まれて


「本当のところはどうなのか。好きなのは元々仲の良い女子か? それとも謠子なのか?」


と尋問を受けることになった。


その間、当の謠子と、元々森田くんと仲良しだった女子は別室に隔離され、


尋問の結果を待つというおかしな構図になった。



謠子は、ただほんのちょっと本当のことを知りたいだけだったのに


思いがけなく大事になってしまってもう後には引けない空気になった。


こうなってしまった以上、同じ仲間内であやふやなままでいるのもどうしたものかという思いもあった。



しばらくして、問いただしていた仲間たちが興奮気味に戻ってきた。


「森田君の好きな人は、謠子だって!」


まさか! 噂は本当だった。


こんな自分を好きになってくれる人がいたなんて。



結局は単なる噂で「やっぱりね! そうだと思ったよ~」と少し残念に思いながら笑い合う。


好いてくれるひとがいることにどこかで期待しながらも、そういう結末しか想像していなかった謠子は急に


もうひとりの女子と森田君に申し訳ない気持ちになった。




第二章14-③誰かを好きになること へ続く



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# by ren_0627 | 2022-09-29 10:35 | ≪小説≫【かくれんぼ-前編】第二章

学校でいつも放課後集まっていた仲間うちの一人の男子が


謠子に好意を持っているらしいという噂話が、或る日突如として持ち上がった。


彼は、同じ中学から一緒に入学して来た別の女子と仲良しで、その女子もいつも集まる仲間のひとりだ。


ふたりの仲の良さは、この学校に入学してきた時から目立っていたから


その存在は同じクラスならみんなが知っている周知の事実だった。


付き合っているかどうかは知らなくとも、他に好きな子がいるなどということは誰も想像すらしなかった。


まさか! 謠子を好きだなんてことがある筈がない。



第二章14-①誰かを好きになること~謠子16歳-小説【かくれんぼ】_d0140750_14212473.jpg



でも〝火のない所に煙は立たぬ〟


そんなことある筈がないとは思っても、自分の名前が挙がった噂の真相を


謠子は確かめてみたいという衝動に駆られていた。


はっきりさせてどうこうというつもりは無いけれど、自分がこの類いの噂の的になるなど初めてのことで


少しばかり浮き足立つような気持ちもあったし、純粋に不思議でもあった。


そしてこの手の噂は、高校生にとっては当の謠子でなくても大ごとだった。




第二章14-②誰かを好きになること へ続く



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# by ren_0627 | 2022-09-27 14:22 | ≪小説≫【かくれんぼ-前編】第二章

いつものようにレッスンの後で講師とカフェオレを飲んでいた時、ふと視線を感じて顔を上げると


いつも以上にこちらをじっとりと見つめている講師と目が合った。


視線を離さないままで講師は「その長い髪、とても似合ってるよ。かわいいね」と言い


謠子の体に絡みつくように見つめ続ける少し細めたその独特の眼差しに、


足先からぞわぞわと鳥肌が立ち上がるようにして全身を駆け巡った。



第二章13-⑦音楽スクールの個人授業~謠子16歳-小説【かくれんぼ】_d0140750_20385662.jpg



「そうですか? ありがとうございます」


謠子はいつも通りを装ってかろうじて愛想笑いで取り繕いながら


心臓の奥の方から小さな謠子の分身が


(この空間から一刻も早く逃げ去りたい!)と叫ぶ声を聞いた。


もうこれ以上は続けられない。


何とかここから抜け出さなくては。



翌週のレッスンまでの間に胸の下あたりまであった髪をばっさりショートカットにした謠子が


いつも通りに音楽スクールの防音室で授業が始まるのを待っていると


ドアを開けて入ってきた瞬間の、ショートカットになった謠子に気づいた講師の表情が


酷く驚いて硬直していくのを見届けて、あんなに楽しみにしていた音楽スクールをその日を最後に退会した。




第二章14-①誰かを好きになること へ続く



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# by ren_0627 | 2022-09-25 20:47 | ≪小説≫【かくれんぼ-前編】第二章

次のレッスンの後も、当たり前のように「ホールで待ってて」と言われ


それが毎週の決まり事のようになって、音楽スクールの受付の女性も謠子の姿を見つけると


まるで講師の恋人を見るような目でチラリとこちらを見るようになった。


毎週の、断るタイミングを与えられない当たり前みたいな一連の流れが


謠子は次第に窮屈で恐ろしく感じるようになっていった。




第二章13-⑥音楽スクールの個人授業~謠子16歳-小説【かくれんぼ】_d0140750_15580742.jpg


この時間は一体何なのか?


ただ音楽を学びたくて通い始めたスクールなのに


頑張ってアルバイトをした貴重なお金で通ってるのに


次第に音楽を習っている時間よりも、講師とカフェで過ごす時間の方が長いような気がしてきた。



けれど、どんな風に断ったら良いのかわからないまま、謠子は毎週講師の先生に促されるまま


新しいカフェを紹介されてカフェオレを飲み続けた。


一体、講師はどういうつもりで誘い続けているのだろう? 


例えばカフェに行くことを断ったとして


その後の二人きりのレッスンは、どう考えても気まずくなるだろうことは想像できた。




第二章13-⑦音楽スクールの個人授業 へ続く

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# by ren_0627 | 2022-09-24 15:59 | ≪小説≫【かくれんぼ-前編】第二章


慌ててあとについて外に出ると、講師はどんどん先を歩きながら


たまにこちらを振り返ってにっこり笑う。


美味しいコーヒーのお店を教えてくれるというのだろうか?



「ほら、ここ」


講師はお洒落なカフェの前で立ち止まり、お店のドアを開けて謠子を振り返った。


促されて中に入ると、薄暗いなかに揺れるような明かりが灯されており


店内は確かにお洒落で大人のムードが漂っていた。


装飾も、流れるジャズの落ち着いたBGMも、謠子がいつも友人と入るファストフード店とは程遠い。



第二章13-⑤音楽スクールの個人授業~謠子16歳-小説【かくれんぼ】_d0140750_16404389.jpg



窓際のテーブルに向かい合って腰掛けると直ぐに店員がやってきて


講師がブラックコーヒーを頼み、謠子はメニューからカフェオレを注文した。


講師が一体どんなつもりで謠子をここに連れてきたのかは判らない。


単純にこの店を謠子に教えたかっただけのかもしれない。


その真意は掴めないまま、結局小一時間ほど他愛のない話をして店を出た。



殆どは講師から投げかけられるの謠子への質問で、相変わらず独特の視線を謠子に向けながら


学校のことや友達のこと、今興味のある音楽などについての質問が続いた。


謠子は終始「はい」とか「いいえ」とか、時々愛想笑いをする程度の時間を訳も分からないまま過ごし


「そろそろ帰らなきゃいけない時間かな?」と講師が言った時には、時計は9時半を過ぎていた。


「はい。そろそろ」と謠子が答えてカフェを出ると


「それじゃまた来週ね」と講師はまたにっこり微笑んで、やっと謠子を解放した。




第二章13-⑥音楽スクールの個人授業 へ続く

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# by ren_0627 | 2022-09-23 16:42 | ≪小説≫【かくれんぼ-前編】第二章